豆4産地の焙煎日誌、焙煎度と抽出テスト結果を並べた

3 か月前
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豆4産地の焙煎日誌、焙煎度と抽出テスト結果を並べた

3月のうちに4産地の生豆が揃ったので、店の試焙煎を一通りやり直した。
うちは普段ブレンドが2種類、シングルが日替わりで1種類という構成で出している。来期のシングル候補と、ブレンドの中身を入れ替えるかどうかの判断のために、毎年この時期にまとめて焙煎テストをする。

今期テストしたのは、グァテマラ・アンティグア、エチオピア・イルガチェフェのウォッシュト、コロンビア・ナリーニョ、ブラジル・セラード。仕入先は別々で、生豆の到着時期もばらついていた。並べて焼くのは初めて3月の最終週になった。

焙煎条件の控え

うちの焙煎機は5kg釜のフジローヤル。3月25日の閉店後、19時から24時の間で4回に分けて焼いた。1釜あたり生豆1.5kgで投入し、ハンドピックは投入前と焙煎後の2回。室温は店内で14℃、釜の予熱は前回終わりから30分置いて190℃に落としてから始めた。

ガス圧は1次まで1.3kPa、1次以降は0.9kPaに絞るのが、ここ数年の私のやり方だ。
これで早すぎず、遅すぎず、豆の中までだいたい火が入る。焼き上がりの目安は煎り止めの色と、ハゼ音の収まり方で決めている。

産地焙煎度投入〜1ハゼ1ハゼ〜煎り止め煎り止め温度
グァテマラ・アンティグアフルシティ10:304:20213℃
エチオピア・イルガチェフェミディアム9:501:40202℃
コロンビア・ナリーニョシティ10:102:50208℃
ブラジル・セラードフレンチ11:006:10219℃

イルガチェフェは浅煎りにすると決めていたので、1ハゼの直後で止めた。ブラジルは深煎りでブレンドのベースに使うつもりだったので、2ハゼに入ってから少し進めた。グァテマラとコロンビアは、シングルで出すことを考えてフルシティ寄りとシティで分けた。

抽出テストはペーパーで揃えた

焙煎の翌々日、3月27日の開店前にカリタの3つ穴で抽出テストをした。
本当はネルでも取りたかったが、4種類を同じ条件で比べるなら、ハンドリングの揺れが少ないペーパーの方が公平だ。ネルは産地が決まってから、改めて取り直す。

抽出条件は固定した。豆15g、湯温88℃、湯量225g、蒸らし30秒、総時間2分50秒。
グラインドはみるっこの中細挽き、目盛りは4の中央。TDSはアタゴの屈折計で測った。

産地TDS収率酸味苦味ボディアフター
グァテマラ・フルシティ1.42%21.3%チョコ・短め
エチオピア・ミディアム1.28%19.8%花・長め
コロンビア・シティ1.38%20.9%中弱ナッツ・中
ブラジル・フレンチ1.46%21.7%ビター・長め

数字だけ見るとブラジルがTDSも収率も一番高いが、これは焙煎度の差なので比較にあまり意味がない。同じ条件で焼いたわけではなく、産地ごとに焙煎度を変えているテストなので、当たり前と言えば当たり前だ。

私が見たかったのは、それぞれの豆を「うちで出す形」で淹れたときに、どこに性格が出るか、という方だった。

アフターで残ったのは、結局イルガチェフェだった

4杯を並べて、間に水を挟みながら順番に飲んだ。
グァテマラはチョコレートの甘さがアフターに残るが、ペーパーで淹れるとその余韻が短かった。ネルで淹れ直したらもう少し伸びるはずだ。コロンビアはバランスが良くて、何杯飲んでも疲れない印象だった。ブラジルは深煎り特有のビターが舌に長く残って、ミルクを足したくなる飲み方だった。

問題はイルガチェフェだった。
1杯目の口に含んだ瞬間、ジャスミンとレモンの間みたいな香りが鼻に抜けた。最初の3秒は明らかに他の3つより華やかだ。ただ、酸味が立ちすぎて、空腹で飲むと胃にくる飲み方だと思った。これをうちの常連、特に60代以上の方に出すのは、たぶん向かない。

それでも、ぬるくなってきた頃にもう一度口に含むと、酸味が落ち着いて、長い花の香りだけが残った。アフターが一番長かったのはこれだった。

数字で選ぶつもりが、顔で選んだ

ここからは焙煎日誌というより、独り言になる。
表をプリントアウトして、来期のシングル候補を決めるために店のカウンターに並べた。数字で選ぼうと思っていた。TDS、収率、アフターの長さを比べて、客観的に。

ただ、選んでいる途中で、うちの土曜の常連のFさんの顔が浮かんだ。
Fさんは70代の元教師で、20年以上うちでブレンドのMサイズを飲んでいる。新しい豆を出すと、最初の一口で「これは違うね」と短く言う人だ。

イルガチェフェをFさんに出したら、たぶん「これは違うね」になる。
それは悪い意味ではなくて、Fさんの普段の珈琲とは違う、というだけのことだ。ただ、毎日来る人に「違う」と言わせ続ける選び方は、店としてはあまりよくない気がする。来期のシングルはコロンビアのシティを軸にして、イルガチェフェは月の3日くらい、限定で出すことにした。

数字を並べて選ぶつもりが、結局、常連の顔で決めた。
30年やってきて、これは間違ってないと思う。気がする。

4月の追記

これを書いているのは4月の頭で、すでに新しいシングルを店に出して2週間が経った。
Fさんは2週間とも土曜にコロンビアを飲んで、何も言わなかった。何も言わないのが一番いい反応だ。

イルガチェフェは火曜に出した日に、一人だけ「いつもと違って花の匂いがする」と言ってくれたお客さんがいた。30代の女性で、月に1度くらい来る人だ。次に出すのは4月末にしようと思っている。

焙煎日誌は、毎期こうやって書き残している。
書いたものを翌年見返すと、自分が何を考えて何を選んだかが、思ったよりよく分かる。記憶は曖昧になるが、数字と独り言が両方残っていれば、当時の判断は再現できる。

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