30代でバンドを続けるための、機材費の現実的な落としどころ
30代でバンドを続けるための、機材費の現実的な落としどころ
先週、欲しかったヘッドアンプを諦めた。
Aguilar の Tone Hammer 500、ずっと気になってたやつだ。中古で7万円台。来週給料日だし、買おうと思えば買える。買えるんだけど、買わなかった。
20代の自分なら、たぶん買ってた。「ボーナスで」とか「来月切り詰めれば」とか言って、3日後にはレジに並んでた。買ったあと、しばらく満足して、3ヶ月後にはまた次の機材を探してた。
34歳になった自分は、買わなかった。これは抑え込んだというより、買わない判断のほうがちょっと楽しかった、っていう感覚に近い。なんでこうなったのか、書いておきたい。
20代の機材費はバグってた
専門学校の頃から数えると、ベースを弾いてもう16年になる。最初の楽器が中古のジャズベ3万円、19歳のときの初バイト代だった。
そこから20代の10年、自分が機材に使った金額は、たぶん200万円を超えてる。正確な記録はない。残ってる楽器は4本、エフェクター12個、ヘッドアンプ2台、キャビ1台、ケーブル類は数え切れない。中古で売ったぶんを差し引いても、150万円は使ってる計算になる。
20代の頃は、これが普通だと思ってた。バンドメンバーも似たような感じで、Tは中古のドラムセットを2回買い替えてたし、Kはギターを5本持ってた。給料の3割くらいを機材に投げ込むのが、自分たちのなかでは標準だった。
問題は、30代に入って色々変わったことだ。
30代になって変わったこと
自分の周りで、バンドを辞める人が増えた。理由を聞くと、半分以上は「お金」だった。
正確に言うと、お金そのものじゃない。結婚して家計が共同になった、子供が生まれて自分の自由になる金額が減った、家を買って住宅ローンが始まった、こういう「機材に使えるお金」が物理的に減る出来事が、30代には集中する。
自分は独身だから、その意味では恵まれてる。でも、いずれそうなる可能性は普通にある。
もうひとつ、機材に使う気力が変わった。20代は「欲しい機材を全部買って試す」が楽しかった。30代は「数ある機材から1つだけ選んで長く使う」のほうが、しっくりくる感覚になってきた。これは加齢の話だと思う。バンド辞めた友人たちも、最後のほうは「もう新しい機材買う気力ない」って言ってた。
月予算を決めた
3年前くらいから、自分は機材費に「月1万5千円まで」っていう枠を決めてる。
これがいまの自分の落としどころだ。年間にすると18万円。10年で180万円。20代の半分くらい。でもゼロじゃない。
枠の内訳はこんな感じ。
- ストック予算:月8千円。エフェクターの中古買い替えとか、ケーブル更新とか、雑費的なもの
- 大物積立:月5千円。年間6万円。ヘッドアンプとか楽器本体を買うときの貯金
- スタジオ・ライブ関連:月2千円。シールド交換、弦、ピック、ストラップの消耗品
これを守ってる月とそうじゃない月があって、超えた月は翌月の枠から引く。営業で予算管理してるのと、考え方は同じだ。
この枠を決めてから、買い物の質が変わった。月1万5千円までしか使えないから、欲しいものリストを優先順位つけて並べるようになる。今欲しい機材5個のうち、どれを今月分の枠に入れるか、で頭使う。
試奏とレンタルが趣味になった
枠ができたあと、自分の機材趣味で変わったのは、「買わない楽しみ方」が増えたことだ。
楽器店の試奏が、前より楽しくなった。買わない前提で試奏すると、純粋に音だけを評価できる。「これ買ったら自分の音作りどう変わるかな」を頭のなかで完結させる。試奏のあと、店員さんに「いい音ですね、また来ます」って言って帰る。20代の頃は、試奏したらほぼ買ってた。買わずに帰るのが、結構気持ちいい!
あとリハスタの機材レンタル。最近の都内のスタジオは、いいヘッドアンプを置いてくれてるところが増えた。月1で違うスタジオを試して、自分のキャビと色々なヘッドの組み合わせを試す。これだけでも、機材趣味としてはわりと満たされる。
冒頭の Tone Hammer 500も、実はスタジオで何度か触ってる。借りられるんだから、買わなくても弾ける。買ったら家で1人で弾く時間が増えるだけだ。自分にとって、家で1人で弾く時間と、スタジオでバンドと弾く時間、どっちが本質か。考えるまでもなくスタジオのほうだ。
「全部買う」を諦めると、続く
10年前の自分に伝えるとしたら、これだ。
「全部買う」を諦めると、バンドが続く。
20代で機材を全部買おうとすると、30代でお金が尽きるか、気力が尽きるか、家族の反対で続けられなくなる。自分の周りで辞めた人の多くは、機材を買い続けることとバンドを続けることが、頭のなかで一緒になってた人だった。
機材を1個も買わなくても、バンドは続く。10年前の楽器でも、ライブはできる。買い替えるべき機材と、買い替えなくていい機材を見分ける技術は、30代になって初めて身についた。
逆に言うと、月予算の枠を守って細々と機材を買い続けてれば、40代でも50代でもベース弾いてられる気がしている。これは自分にとってデカい発見だ。
落とした枠の外で、欲しいものリストを書く
ちなみに、買わない判断をしたあとも、欲しいものリストは書き続けてる。
Tone Hammer 500、Darkglass の B7K、Sandberg の中古のジャズベ、あと最近気になってるのは MXR の M82ベース用エンベロープフィルター。買わないんだけど、リストに書いておく。書いておくと、半年後に見返したときに「もうこれ別にいいや」って消せる機材が結構ある。
リストから消える機材は、つまり「欲しいと思ってたけど、よく考えたら自分には要らなかった」やつだ。30代になって増えたのは、この「消える機材」を見抜く目だと思う。
リストを書きながらリストを消す。これが、機材費を抑えるいちばん有効な方法かもしれない。ぶっちゃけ、買わない判断のほうが、買う判断より、ちょっとだけ大人っぽくて気持ちいい。これに気づくのに10年かかった。