開業4年目、問診票の欄を半年に一度だけ書き換えている理由
開業4年目、問診票の欄を半年に一度だけ書き換えている理由
開業して4年が過ぎた。
問診票はずっと自作で、A4一枚に収まる範囲のものを使っている。これを半年に一度、春と秋の終わりに一度だけ書き換えるのが、ここ3年ほどのリズムになっている。
ふと数えてみたら、4年で7回しか書き換えていないことになる。
業務道具としては、ずいぶん寡黙な改訂サイクルなのかもしれない。ただ、これくらいの間隔が私にはちょうどよい。今日は4月の改訂作業をしながら、そのことを少しメモしておきたい。
開業1年目は、毎週いじっていた
開業した最初の年、私は問診票を毎週のように手直ししていた。
新しい患者さんが来るたびに「あの質問がもう一つあれば」「この欄は不要だった」と感じることがあって、そのたびに机に向かって直していた。1年で30回くらい改訂したと思う。
最初は丁寧に直しているつもりだった。
ただ、年末に新旧の問診票を並べてみると、欄が2倍以上に増えていた。最新の気づきを反映するたびに、何かを足していて、何も引いていなかった。本人の自由記述の欄まで小さくなって、これは患者さんが書くものというより、私が書きたいものになっていた。
そのときに、ああ、これはちょっと違うな、と思った。
毎週直していたのは「自分が学んでいる」という感覚が欲しかっただけで、問診票自体がよくなっていたわけではない、と気づいた。
2年目の春、半年に一度に決めた
2年目の春に、欄をいったん全部書き出して、必要なものだけ残す作業をした。
半日かけて、19欄を11欄まで減らした。減らしたのは「本人が書きにくいだろうな」と思いつつ残していた欄や、自分が結局聞き直してしまう欄だ。
そのときに決めたのが、これから問診票は半年に一度だけ直す、ということ。
毎月見直すと、最新の発見に引っ張られる。3ヶ月では、その発見がほんとうに使えるかが分からない。半年あれば、ひととおりの患者層を見て、新しく加えた欄が機能したか、不要だったか、が一応見える。これは現場監督だった頃の検査周期の感覚と少し似ている。施工後の点検は、早すぎても遅すぎても、見えるものが違ってくる。
それから3年、4月の終わりと10月の終わりに1時間だけ、問診票を広げる時間を取っている。
4月の改訂作業で、いつもやっていること
机に問診票を広げて、まずやるのは「足したい欄」を全部書き出すことだ。
半年のあいだに「あったら便利だな」と思った欄を、別の紙にメモしている。今日数えたら、半年で6個メモしてあった。
そこから、足す前に必ず一段階置く。
6個のうち、どれが「自分が聞き出したい欄」で、どれが「患者さんが書きたい欄」かを分ける。3個と3個に分かれた。前者は問診のなかで私が口頭で聞けばよくて、紙に残す必要はない。問診票はあくまで、患者さんが家で書いてきてもらう道具で、私が満足するための道具ではない。
それから、引く欄も探す。
4年で7回直しているなかで、引く作業をしないと、結局欄は増え続ける。今日は「半年以内に大きな病気をしたか」という欄を、別の欄と統合して1つ減らした。
足して、引いて、最終的に欄数はだいたい同じになる。半年に一度の改訂は、量を増やすことではなくて、入れ替えることなのだと、最近やっと分かってきた気がする。
書き換えないことで残るもの
半年に一度しか書き換えないと決めてから、もうひとつ気づいたことがある。
古い欄をそのまま残すことで、患者さんの回答の変化が見えやすくなる。
たとえば「最近、深く息を吸えていますか」という欄は、3年前に追加してそのまま残している。
3年分の患者さんが同じ問いに答えているので、季節ごとの傾向や、年代ごとの違いが、自分のなかで少しずつ蓄積されてきた。これは毎月欄を入れ替えていたら、見えなかったことだ。
問診票は道具だけれど、長く同じ問いを残しておくと、こちらの観察を支える器にもなる。
半年に一度の改訂は、欄をよくするためというより、欄を変えないことの価値を守るためかもしれない、と最近は思っている。
4月の改訂作業はだいたい、夕方に終わる。
新しい問診票を30部ほど印刷して、机の引き出しに入れて、終わり。これでまた半年、同じ紙を使う。
書き換えないと不安になる時期もあった。
ただ、書き換えないことで残るもののほうが、最近はずっと大事に思える。問診票は、自分が新しいことを学んでいる証明書ではない。患者さんと自分の間にある、半年ぶん古いままの道具。それでいい気がしている。