小麦粉3品種の吸水・グルテン・香りを試作で比べた記録

2 months ago
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小麦粉3品種の吸水・グルテン・香りを試作で比べた記録

3日続けて、同じ配合・同じ工程で粉だけを変える試作をした。今日でひと区切り。閉店後の厨房でメモをまとめておく。

比較したのは、いつも使っているリスドオル、それから春よ恋、最後にタイプER。配合はどれもストレート法でルヴァン20%、塩2.0%、加水率は粉の様子に合わせて2%刻みで動かした。本当は揃えたかったが、72%固定で3品種は厳しいと初日でわかったので、粉ごとに最適っぽいところを探る形にした。

試作の数字

ロット産地加水率オートリーズミキシング発酵+リタルデ焼成クープの開きクラムの気泡香り
リスドオル北米産混合74%60分8分5h+12h245℃/22分中〜大、不均一麦の香り、後味にバター
春よ恋北海道産72%60分6分4h+12h240℃/22分不可細かく密甘い、穀物寄り
タイプERフランス産76%90分10分5h+14h250℃/20分良〜やや過剰大きく不均一強い乳酸、果実感

数字だけ見ると、加水率が一番違うのはタイプER、ミキシング時間はリスドオルと春よ恋でわずか2分差。

吸水で気づいたこと

吸水量は事前に予想していたほど大きく違わなかった。72から76の4%差。違いが出るのは「吸う速さ」のほうだった。

リスドオルは水を入れた瞬間にざらつきが消える。オートリーズ60分でほぼ落ち着いていた。春よ恋は30分の段階ではまだ粉っぽさが残っていて、60分でようやくなじむ。タイプERは逆に水を入れた瞬間からぬるっとした手触りになり、90分置くと生地全体が伸びてきていた。

メモには「吸水率」を書いていたが、本当に並べたいのは「吸水時間」だったかもしれない。次回の試作からは、オートリーズ30分・60分・90分のサンプルを取って、グルテン形成の差を見てみる。

グルテンの粘り戻り

ミキシング後、自分は捏ね台に生地を一回だけ叩きつけて、跳ね返り方を聞く癖がある。修業時代に師匠から教わったわけではなく、いつのまにかそうしていた。

跳ね返りで一番違ったのは春よ恋。叩いた瞬間は柔らかく着地するが、3秒くらいかけて少しだけ戻ってくる。これがいわゆる粘りだと思う。リスドオルは着地後ほぼ動かない。タイプERは着地と同時に横にだれて、戻らない。

ここで仮説。春よ恋のクープが開かなかったのは、ミキシング不足ではなく、むしろ粘り戻りが強すぎて二次発酵で生地が縦に伸びきれなかったのではないか。原因仮説をメモに3つ並べておく。

  1. ミキシング時間6分が短くて、グルテンが十分にほどけていなかった
  2. 加水率72%でも春よ恋には少ない可能性。次は74%で試す
  3. 北海道産は灰分が低めで、もともとクラム締まりの方向に出やすい

3つ目はあとで本で確認する。

香りは焼成後より発酵中

これは予想外だった。3品種とも、焼き上がりのクラストの香りを比較するつもりで試作を組んだのに、いちばん差が出ていたのは発酵の途中、リタルデ明けに生地を出した瞬間だった。

リスドオルは麦の素朴な香り。春よ恋は甘い、ほんの少しお菓子っぽい香り。タイプERは乳酸と果実感が強く、香りだけ嗅いだら別の発酵食品と間違えそうなくらい。焼成後はこの差がかなり丸まる。クラストの香ばしさが上にかぶさってきて、粉そのものの香りが奥に引っ込む。

つまり粉を選ぶときは、焼き上がりの香りだけ追いかけても遅い。発酵途中の香りで判断できるようになりたい。これは記録だけで身につく感覚ではないので、毎日嗅ぐしかない。

まとめ

数字を並べると違いははっきりするが、結局のところ「捏ねていて手に残る感覚」のほうが先に違いを教えてくれる気がする。表に書ける数字より、書ききれない情報のほうが多い。だから記録は記録として残す。だが、店で出す配合を決めるのは捏ね台の上だ。

次回の試作は春よ恋の加水率74%、ミキシング8分、リタルデ14時間で1回。同条件でリスドオルを基準として焼き比べる。タイプERは扱いが難しいので、もう少し基本配合に慣れてから戻ってくる。

明日は早番。仕込みのときに今日の感覚を忘れていないうちに、もう一度春よ恋を触っておく。

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