8年続けた深夜の発注を、午前にずらしてみた
8年続けた深夜の発注を、午前にずらしてみた
うちの店は、ずっと深夜帯のオペレーションの一環で、翌日の発注を深夜1時から2時の間にやっていた。FC開業の8年前からずっとそうで、本部のSVもとくに何も言わなかった。便利だった理由は単純で、深夜帯はレジが暇な時間が長いから、その間に発注画面を開いてポチポチやれる。深夜1人体制なら、これが一番効率的だと思っていた。
これを4週間前に、午前9時から10時の間にずらした。理由は前回のロス率改善でも書いた通り、深夜の発注だと当日の昼の売れ行きが見られないからだ。やってみたら、ロス率以外に2つの数字が動いた。動いた数字を書いておく。
ずらす前の運用
ずらす前は、こうしていた。
- 深夜1時頃にPOSの発注画面を開く
- 本部の推奨数を見ながら、自分の感覚で微調整(だいたい0.9掛け)
- 米飯、惣菜、ホットスナック食材、雑貨を1時間半くらいかけて発注
- 翌日13時頃にトラックで納品、そのまま昼の品出しに合わせて補充
深夜帯の発注のメリットは、客の少ない時間に集中できることだった。デメリットは、当日の朝と昼の売れ行きが分からないまま翌日ぶんを決めることだった。
たとえば、月曜の昼に近所の工場で何かイベントがあって弁当が普段の倍売れた日があっても、自分はそれを知らないまま、月曜深夜に火曜ぶんの発注を組んでいた。あとから日報を見て「あ、月曜にこんな動きあったのか」と気づくのは、もう火曜ぶんの発注を出した後だった。
ずらし方
午前9時から10時にずらすために、深夜の作業手順を入れ替えた。
- 深夜1時から2時の時間:レジ締めの準備、揚げ物の片付け、清掃を前倒し
- 午前9時の段階で、前日の昼から夜のPOSデータを確認
- 午前9時から10時の間に発注を入れる
- 納品時刻は変えずに翌日13時頃
午前は自分(オーナー)がだいたい店にいる時間なので、自分が発注を担当する形になった。深夜帯のバイトには発注業務を外してもらった。バイトさんからは「楽になった」と言われた。発注は判断が必要な業務で、深夜帯のスタッフが1人でやるには負荷が高かったらしい。これは後で書く。
変わった数字1: 米飯・惣菜カテゴリのロス率
最初に動いたのは予想通りロス率だった。
| カテゴリ | ずらす前(4週間平均) | ずらした後(4週間平均) | 差 |
|---|---|---|---|
| 米飯(弁当) | 3.4% | 3.0% | -0.4pt |
| 惣菜 | 2.9% | 2.6% | -0.3pt |
| ホットスナック | 4.1% | 4.0% | -0.1pt |
| パン類 | 2.2% | 2.1% | -0.1pt |
| 全体 | 3.0% | 2.7% | -0.3pt |
下がったのは主に米飯と惣菜。当日の昼の動きが見られるようになったのが大きい。たとえば「水曜の昼にのり弁がいつもより5個多く売れた」というデータがあると、木曜ぶんも少し増やせる。逆に「火曜の昼に唐揚弁当が3個残った」のが分かれば、水曜は推奨より1個減らせる。当日の動きが翌日に反映されるサイクルになった。これだけのことで、月次のロス率が0.3ポイントぶん変わる。
ホットスナックとパンはほぼ変わらなかった。これらは消費期限が短いか、発注頻度が違うので、ずらしの恩恵が出にくいカテゴリだと思う。
変わった数字2: 機会損失(品切れ発生件数)
もう1つ動いたのは、品切れの件数。これは予想していなかった。
うちの店では「品切れチェック」というのをやっていて、本部からの巡回時に売り場の品切れSKUを数える運用がある。毎月SVが訪店時に数えていく。この数字が、ずらした後に明確に減った。
| カテゴリ | ずらす前(月平均件数) | ずらした後(月平均件数) | 差 |
|---|---|---|---|
| 米飯 | 5 | 2 | -3 |
| 惣菜 | 4 | 2 | -2 |
| ホットスナック | 2 | 2 | ±0 |
| パン類 | 3 | 3 | ±0 |
| 全体 | 14 | 9 | -5 |
これも米飯と惣菜で大きく動いた。理由はロス率の話と同じで、当日の動きが見えるようになったからだ。
ずらす前は「ロスを減らすために発注を絞る」という意識が強かった。絞ると、当然品切れリスクが上がる。本部の推奨より少なく発注して、想定外に売れたら品切れになる。これは怖い。一度品切れを経験したお客さんは、別の店に行ってしまう確率がある。
ずらした後は、絞る判断と攻める判断を、当日の昼のデータを見て使い分けられるようになった。「今日の昼、唐揚弁当が予想より早く減ってる、明日は推奨より2個増やそう」みたいな判断ができる。ロス率を下げながら、品切れ件数も同時に下げられた。これは思ってなかった成果だった。
隠れていた3つ目の数字: バイトさんの負荷
ここから、書きながら気づいた話。
ずらしてから、深夜帯のバイトさんたちの様子が少し変わった。深夜1時に1人で店に立っているSさん(学生)が、休憩時間にスマホを見ながら話すようになった。前は休憩時間も発注画面の前で「これ、推奨数のままでいいですかね?」と自分にLINEを送ってきていた。
深夜帯の発注は、当日の自分(オーナー)にはLINEで「これでいいですか」と確認が来るが、夜中の2時に判断するのはバイトさんも自分も疲れる。判断の精度も落ちる。眠い深夜2時に弁当を14個にするか15個にするかなんて、まともに考えられない。
午前にずらしてからは、自分が落ち着いた状態で発注を決めるので、迷いが少ない。LINEのやり取りも減った。バイトさんは深夜帯に発注画面を一切開かなくなった。その代わり清掃や品出しに時間が回せて、深夜の店内が前より整うようになった。
これは数字に出にくいが、長期的にはバイトさんの定着率に効くと思う。コンビニ業界で人がすぐ辞めるのは、給料の問題以上に「責任は重いのに判断材料がない」状況が多すぎるからじゃないか、と前から思っていた。深夜の発注は、その典型例だった。判断材料は1日遅れのPOSデータしかないのに、責任は「ロス率」として翌月の数字に乗ってくる。これをバイトに背負わせていたのは、いま考えると申し訳なかった。
やってみて思ったこと
ずらしの一番の効用は、ロス率でも品切れ件数でもなくて、「いつ判断するか」を自分で決めたことかもしれない。
8年間、深夜の1時から2時に発注をしていたのは、自分の意思じゃなくて、ただ「最初にそうしたから」だった。本部の推奨も深夜入力前提のスケジュールで設計されていたし、SVも何も言わなかった。誰も「変えてもいい」と言わなかったから、自分も変えなかった。
変えてみたら、3つの数字が動いた。次は、何を変えたら何が動くか、もう少し意識的に試したい。次は朝の品出しの順番を変えてみようと思っている。これは仮説段階で、結果が出たらまた書く。
午前10時。これから発注画面を開く。いまの自分には、深夜1時よりこの時間の方が、明らかに頭が動く。