授業準備90分を、教材と板書計画で4分割した手順

授業準備90分を、教材と板書計画で4分割した手順

中学受験塾の講師は、授業準備に意外と時間がかかる。
うちの塾は新6年生のクラスで週4コマ、5年生クラスを週3コマ持っていて、1コマあたりの授業時間は90分。これに対して、私の準備時間は平均で1コマあたり90分ぴったり、というのを目標に置いている。

90分というのは、自分で何度も測って決めた数字だ。
入塾2年目の頃の私は、1コマの準備に2時間も3時間もかかっていた。それで授業の質が高かったかというと、必ずしもそうではない。長く準備した日のほうが、板書がぐちゃぐちゃで生徒に「先生、今日のノート取りにくいです」と言われたこともある。

5年目になって、いまの形に落ち着いた。
90分を「教材確認」と「板書計画」の2軸で4分割する、という手順だ。これは私の頭で考えただけのもので、塾内のマニュアルにはない。ただ、同期の講師にも何人か共有していて、悪くないという反応はもらっている。

90分の4分割

まず、結論の表を置いておく。

段階時間配分内容
1. 教材確認0〜20分当日扱う単元のテキスト範囲を全問解き直し、解法の選択肢を確認
2. 板書計画(前半)20〜50分90分授業の前半45分ぶんの板書をノートに下書き
3. 板書計画(後半)50〜75分後半45分ぶんの板書、確認テストの形式選定
4. 最終チェック75〜90分板書下書きを通読、宿題と次回告知の整理

教材確認が20分、板書計画が前半30分・後半25分、最終チェックが15分。
合計90分。

これを思いついたのは、たぶん3年目の冬だった。
それまでの私は、教材確認と板書計画を区別せずにダラダラやっていた。テキストを開いて、解いて、解きながら板書を考えて、また別の問題を解いて、と行き来していた。これだと頭の中で「教える内容」と「教える順番」が混ざる。混ざると、板書計画がぼやけて、結果として授業中の板書が場当たり的になる。

4分割にしてから、いちばん変わったのは、私の脳内の切り替えだった。
20分間は「解く頭」だけで集中する。50分間は「教える頭」だけで集中する。最後の15分は「点検する頭」に切り替える。1つの頭で複数のことを同時にやらない。これが、私には合っていた。

段階1: 教材確認(0〜20分)

最初の20分は、当日扱う単元のテキスト範囲を、私が一人の受験生として解き直す時間だ。
6年生のクラスの場合、1コマで扱うのは塾教材の例題4〜6問と、類題演習3〜5問が標準。これを20分で全部解き直す。

ここで大事にしているのは、解法を1つに絞らないことだ。
たとえば比と割合の問題なら、線分図で解くやり方と、面積図で解くやり方と、式で解くやり方の3つを、自分のノートに同じ問題で3通り並べておく。生徒のなかには、線分図のほうがすっと入る子もいれば、式のほうが理解が早い子もいる。当日の授業で誰が手を挙げるかによって、私が黒板に出す解法を切り替える。

ちなみに20分というのは、ちょうど1単元ぶんを解き終わるのに必要な最低時間として、自分で計測したものだ。20分を切ると、解法の選択肢を3通り並べるところまで届かない。25分以上かけると、解法の細部にこだわりすぎて、次の板書計画の頭に切り替えにくくなる。

段階2: 板書計画・前半(20〜50分)

ここから30分かけて、授業の前半45分ぶんの板書を、自分のノートに下書きする。

板書計画の下書きは、A4のノートに、実物の黒板の縦横比に近い長方形を引いてから、その中に書き込んでいく。これは入塾2年目の頃に、先輩講師がやっていたのを真似した。長方形の比率は、黒板の比率と合わせると、本番で「これは板書に収まる量か」が一目で分かる。

書く内容は、3つだけだ。
1つは、その時間で扱う例題の問題文の書き出し位置。2つは、解法を進めるときに板書する線分図・式・図解の置き場所。3つは、最後に残しておく「まとめ」の枠の位置だ。

書きながら、何度か付箋を貼り替える。
私の癖で、付箋に書いた要点を板書計画の上に置いて、配置を物理的に動かしながら考えるのが好きだ。これは効率がいいやり方かと言われると、たぶん他の人にとってはそうでもない。ただ、私は付箋を動かしながら考えるのが手に馴染んでいて、5年やってもこれを変える気はない。

板書計画の前半で重要なのは、「導入の例題1問目で、何分使うか」を決めることだ。
これは私のなかで、毎回いちばん神経を使うところになる。1問目の例題で生徒の手が止まると、その日の授業全体のリズムが崩れる。逆に、1問目をテンポよく流せれば、残りの5問は前のめりで進む。だから、1問目の解法のステップを、黒板に書く順番まで含めて、ノートに番号を振って下書きする。

段階3: 板書計画・後半(50〜75分)

後半25分は、授業の後半45分ぶんの板書計画だ。
後半は、例題2〜6問目と、確認テストの形式選定が中心になる。

確認テストは、その日の授業の最後10分で行う。
塾の標準フォーマットの問題セットを使う日もあれば、私が自分で組み直す日もある。組み直すのは、その日の前半で生徒の反応を見て、つまずきが多そうな単元の問題比率を上げたいときだ。

ここで25分というのは、前半より5分短い。
これは、後半の例題が前半より類題寄り(応用問題よりも基本パターンの繰り返し)になることが多いので、板書の下書きにかける時間も短くできる、という経験則からだ。ただし応用回(過去問演習を組み込む回)のときは、25分を30分に伸ばして、最終チェックを10分に削る。柔軟に動かす。

段階4: 最終チェック(75〜90分)

最後の15分は、ノートに書いた板書計画を通読する時間だ。
ここで点検するのは、3つ。

1つは、板書のなかで「これは生徒が手を止めて写しきるのに時間がかかる」と思える部分があるか。たとえば長い式や、複雑な図解。これがあると、その時間中に生徒の鉛筆が止まって、説明の流れが切れる。ここに付箋を貼って、「写す時間を5秒長めに取る」と書き加える。

2つは、宿題の指示の漏れ。次回までに解いてくる範囲、提出形式、忘れがちな付帯条件を、板書計画の最後のページに書き出しておく。

3つは、次回の告知。模試の日程、補習の案内、教材の追加配付。これを最終チェックで整理しておかないと、授業の最後の3分で「あ、忘れてた」と言うことになる。

15分は、最終チェックには十分な時間だ。
逆に、ここを10分に削ると、宿題の指示が抜ける確率が上がる、というのを私は経験的に知っている。だから、最終チェックの15分は、他の段階より優先して死守する。

なぜ4分割なのか、自分なりの説明

4分割にした理由を、改めて整理しておく。
私が試したやり方は、これまでで3パターンあった。

1つ目は、教材確認・板書計画・最終チェックの3分割。これは試したが、板書計画の60分が長すぎて、後半に集中が切れた。
2つ目は、教材確認・板書計画・確認テスト作成・最終チェックの4分割。これは確認テスト作成だけ独立させた形だが、確認テスト作成は板書計画の延長で進めたほうが頭が切れない、と気づいて止めた。
3つ目が、いまの板書計画を前後半に分ける形だ。これは「45分集中→5分頭の切り替え→25分集中」というリズムが、私の集中力の限界とちょうど合っていた。

4分割の本質は、頭の使い方を切り替えるリズムをつくる、ということだと思っている。
講師の授業準備は、解く頭・教える頭・点検する頭を、いったり来たりさせる作業だ。これを混ぜずにブロック化すると、同じ90分でも板書の解像度が上がる。これは仮説ではなくて、自分の授業のあとの生徒のノートを見て分かった事実だ。4分割を始めた頃から、生徒のノートの取り写しが、明らかに整うようになった。

授業準備の90分を短縮することが目的なのではない。
90分をどう切るかで、授業中の90分の質が決まる、というのが、5年やってきていまの私の結論だ。当面、この4分割で授業を回す。たぶん来年あたり、また微調整して、別の比率を試している気がする。

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