蜂群の不調を「蜜蓋の閉じ方」から早く拾うようになった経緯

3 months ago
0

蜂群の不調を「蜜蓋の閉じ方」から早く拾うようになった経緯

雨の日で外作業に出られないので、納屋で過去の内検ノートを開いている。
30年もやっていると、見方の癖は何度も変わる。いま私は、内検で巣脾を引き上げると、最初に蜜蓋の閉じ方を見ている。蜂の数や女王の姿を確認するより先に、だ。

これは習慣として書いておきたい。自分でも、いつからこうなったかを思い出すのに少し時間がかかる。

もともとは蜂児の幅で見ていた

開業から20年ほどは、群の調子を見るのに蜂児の幅を最初に確認していた。
蜂児の面積が広く、産卵がきれいに揃っていれば、群は強い。これは養蜂家なら誰でも最初に教わる判定軸だと思う。

蜂児で見るのは間違いではない。
ただ、蜂児で異変に気づいたときには、もう手遅れに近いことがある。蜂児の幅が落ちるのは、女王の調子か群全体の体力がすでに崩れたあとに起こるからだ。
段階としては、結果に近いところを見ている。原因や前兆は別のところに出ている、という気がしている。

2021年の冬、1群を失った

転換点になったのは2021年の冬だった。
12月の中旬、定例の内検で第7群の様子を見た。蜂数はやや少ないが、産卵もある。蜂児の幅も普通。女王もすぐ見つかった。判断はAだ、と私はノートに書いた。

その3週間後、第7群は完全な無王のまま消えていた。
死骸は巣箱の前にほとんど落ちていなかった。蜂が逃げたわけではないと思う。緩やかに減って、最後の蜂が女王ごと消えた、というふうに見えた。

12月のときのノートを今見返すと、一つだけ気になる記述がある。
「第7群、蜜蓋がやや乱れる。位置不揃い。蜜は十分」と書いてあった。私はその日、その項目を「気になるが優先度低」として処理していた。蜂数も産卵も問題なかったからだ。

蜜蓋の「閉じ方」を見るようになる

第7群を失ったあと、ノートをもう一度遡って読み返した。
すると、過去に弱った群、あるいは消えた群のノートに、似た記述がいくつか並んでいた。「蜜蓋ややルーズ」「閉じ方薄い」「縁が立たない」など、その時々で言い方は違うが、共通の違和感が書かれていた。

蜜蓋がきれいに閉じられるのは、蜂が十分な数と若さを持っていて、巣の温度と湿度が安定しているときに限る、らしい。
これは古い養蜂書にも書いてあった話なのだが、頭で読むのと、自分のノートで遡って気づくのとでは、納得の深さが違う。

それから5年、内検で巣脾を引き上げたら、まず蜜蓋の縁を見ている。
具体的に何を見ているかというと、以下の4点だ。

  • 蜜蓋の縁が立っているか、平らに伸びているか
  • 蜜蓋の色が均一か、まだら模様か
  • 部分的に未閉鎖の空房が混じっていないか
  • 古い蜜蓋を齧り直した跡がないか

縁が立っていて、色がやや黄みのある均一色なら、その群は当面の体力がある。
縁が崩れて、色がところどころ濡れたように暗かったら、何かが起きていることが多い。蜂児を見るよりも前に、これで7、8割は当たる、と感じている。

いまの内検手順

5年やってきて、いまの私の内検手順はこの順序に落ち着いた。

  1. 巣門の前で1分立つ。出入りの密度と、運んでくる花粉の色を見る
  2. 蓋を外し、最初の巣脾を引き上げる。蜜蓋の縁と色を見る
  3. 同じ巣脾の裏面、続いて2枚目、3枚目と進む
  4. 蜂児の幅、産卵の連続性を見るのはこのあと
  5. 女王の姿を最後に確認する。気配で十分なときはそのまま戻す

蜂児や女王を後ろに回したのは、彼らが「結果」だからだ。
原因や前兆は、蜜蓋と巣門前の出入りに出ている。私はそう考えるようになっている。

これは私の癖だと、自分でも分かっている。
他のベテラン養蜂家に話すと、人によって最初に見る場所が違う。先輩のHさんは巣門の前の蜂の声を聞くと言っていた。同業のSさんは、巣箱を持ち上げた瞬間の重さで判断する、と話していた。
誰の癖が正解か、ということではないと思う。長くやっているうちに、自分の身体に合った観察軸が一つ決まる、ということなのかもしれない。

それでも見落とすことはある

蜜蓋を最初に見るようになってから、明らかに群を早く拾えるようになった。
2024年の春、第3群の蜜蓋の色がまだらだったのに気づき、その日のうちに別の巣脾を入れ替えた。あれは早く動いたから救えた、と思っている。

ただ、ここ5年でもう1群、無王で消した群がある。
そのときの蜜蓋は、ノートを見返しても特に変なことが書かれていなかった。何かを見落としていたのか、別の軸で見るべき時期だったのか、いまでも分からない。
30年やって、すべて見えるようになったわけではない。観察軸は増えていくが、増えるたびに、自分の見ていなかった場所も増えていく気がしている。

来週は晴れる予報なので、第8群の内検をやり直そうと思っている。
先週、蜜蓋の縁がほんの少し平らだった。気のせいかもしれないが、確かめておきたい。

0
0
0